54 :名無しさん 14/07/04 09:20 ID:aK4Gih9KLJ (・∀・)イイ!! (1)
まずモリモリおじさん(Mori-Mori Ojisan、以下MMO)が登場する。彼は気がくるっていた。頭のネジがゆるんでいたので挨拶以外のアンケは殆ど立てられなかったが自分では挨拶アンケこそコソアンの真の用途だと信じこんでいた。彼は実生活では普通の社畜である。しかし彼が実際に「おはよう」等の挨拶を声に出す機会は極めて少い。いつも黙りこくったままだ。毎朝コソアンで挨拶しているのだから会社でまで挨拶をする必要は必ずしも無いというのが彼の理屈だったのだろう。その理屈を誰かが聞いたわけではないにもかかわらず誰もがMMOのその理屈を悟っていた。何が悲しくて自分が業務上必要な会話以外に声を出さなくてはならないのかとMMOは思っているのであろうと皆が信じていた。なぜかというとそもそもそんな必要はまったくないにかかわらずそのまったくない必要以上に彼は周囲の同僚等との関係を深めないようにする努力を怠らなかったからだ。自ら人間関係を疎にしようとするその行動の硬直性は彼の全てを一層コミュ障らしく見せた。どんな仕事であっても顔を合わせた同僚等との挨拶や多少の雑談は必要だということをあきらかにMMOは知らなかった。さらにまた、そもそもなぜそのように見せかけるのかといえば彼は他の会社関係者全員から自分が差別されているのではないかと常に疑っていたからだ。というのは同僚等の中には彼のことをあれは只のコミュ障ではなく何か心理的な病気なのではないかという者がいたし他のある者に到っては言語障害だろうなどとも言い、そうした言葉の端ばしは社内で業務にあたっている際自身のことについては限りなく敏感なMMOの耳にしばしば入ってきたからである。むろんそうした言葉は他の同僚たちの至極素朴な疑問に過ぎず何らMMOを自分たち社畜階級の最下位またはそれより下に貶めようとするものではなかったのだ。むしろ同僚たちの階級感覚ではたとえ実際にはそのような階級制度などが存在しないにもかかわらず、そしてそのことがわかっていてさえMMOは彼らとは基準の異なる階級に属していると思える筈だった。誰ともまともに挨拶をしない者が村八分になるのは日本社会の常識ではないか。それにまたMMOを言語障害というなら彼以上に業務上必要な会話が不得手な者は社内には他にもいたししかも彼は業務上必要な会話は人並み程度にはちゃんとできていた。だがこれは誰にでも容易に想像できることながら彼は当然そういった業務上の会話が不得手な者が嫌いであった。そもそもMMOの如きコミュ障が何人もの同僚と協働せねばならない一般的な職場で働いていることが誰の眼からも不思議に見えた。もちろんそんなことは些細な一例である。しかしその些細な例の積み重なりはMMOの気を狂わせずにはおかなかった筈と誰もが確信していた。もしかするとそれに耐えていることこそMMOがすでに狂っている証拠ではなかっただろうか。MMOが言語障害ではないかと言った者はMMOに挨拶をしても全く挨拶が返って来ないから連想が短絡したのでありしかもMMOは決して社会生活が一人で営めないような本物の障害者ではない。その証拠に彼はまだ馘首されるほどの重大なミスを犯したことはないしコソアンでは時折普通に馴れ合いのレスをしている。さらにもしMMOに言わせるならば当然あの誰々がなぜ自分たちと同じ部署で働いているのかその方がよほど奇妙ではないか誰々は配属からもう随分経つのに必要な社内用語をまともに憶えないではないか等と言った筈である。ところが自分はコミュ障ではないと暗に自己主張するそのMMOが社畜として有能だったかといえば決してそんなことはなかったのだ。MMOの勤務ぶり仕事ぶりは真面目ではあったが正確ではなくスマホでコソアンをチェックするために便所に立つ回数が多いこともあって常に遅滞しており、つまりそれは人事担当者がMMOの仕事への適性に充分疑問を抱き得るほどのものだった。なぜ彼が勤務中にも頻繁にコソアンに来るのかという疑問及び彼が毎週土曜に洋楽アンケを立てようとする時の一種の儀式めいた珍妙な熱唱は近所迷惑故に町内会で話題になっているほどだがこれはのちに詳しく述べる機会があるだろう。


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