- 2 :名無しさん 25/10/20 22:41 ID:2c-q5fA7RX
(・∀・)イイ!! (1) - 私の名前は北綾瀬千景、都内のごく普通の高校に通う女子高生――と、言いたいところだけど、ひとつだけ普通じゃない趣味がある。コーヒーだ。学校の教室でインスタントを飲んでる子たちを横目に、私は家でエチオピア・イルガチェフェをネルドリップで淹れる。豆の焙煎度合い、粉の粒度、水温、抽出時間。全部、自分の手で決めたい。完璧な一杯を目指して、毎日が実験室だ。そんな私の人生を狂わせたのは、一冊の漫画だった。
親友の真帆に「読まないと人生損してる」と押しつけられた『ドラゴンボール』。最初は渋々だった。でも、ページをめくる手が止まらなくなった。悟空でもベジータでもなく、私の心を掴んだのは――ミスターポポ。神殿の庭を静かに整える黒光りした肌の男。あの存在感、底知れない包容力。気づけば私は、画面の中のポポに見とれていた。あの艶。深煎りのコーヒー豆みたいな光沢。――もし、あの人の唾液でコーヒーを淹れたら、どんな味がするのだろう?
その瞬間、私の人生の目的が決まった。「ポポの唾液を再現する」。そんな馬鹿げた妄想に、本気で取り憑かれたのだ。化学部の顧問に生体成分の抽出法を学び、大学の教授に唾液の酵素構成を聞き、果てはAIエンジニアに相談して分子シミュレーションまで教わった。バイトで貯めたお金はすべて実験器具と分析装置に消えた。親には呆れられ、友達には笑われ、それでも私はやめなかった。だって、これは単なる好奇心じゃない。崇拝にも似た探求なのだ。
やがて私は、再現率99.3%という合成唾液を完成させた。透明な液体の小瓶を前に、心臓が早鐘を打つ。ポポの唾液。私のすべてを注いで作り上げた“聖なる抽出液”。その一滴をネルフィルターに垂らし、深煎りのケニアAAを蒸らす。ふわりと立ちのぼる香りに、涙が出そうになった。これは、もはやコーヒーではない。信仰だ。
私の探求はまだ終わらない。次は、ポポ本人に飲んでもらう番だ――たとえそれが、この世界の理を越える行為だとしても。
『ポポの唾液でコーヒー淹れたい』。これは、狂気と情熱が紙一重の少女が、ただ一杯の理想のコーヒーを求めて歩む、神域のグルメファンタジー。
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